ズボラが招いた恐ろしい昔話

最終更新: 2020年10月5日


誰の人生にもゾッとする恐ろしい事が幾度かは起きてしまうものだろうと思うが、昨日ふとしたきっかけで思い出した話をひとつ書いておこう。


当時大学生だった私は八王子駅から徒歩20分の小さなアパートに住んでいた。

近所のコンビニやスーパーに出かける時、施錠をしないズボラだったこと(そもそも貧乏すぎて金目のものなどなかった)そして、貧乏だったのにバイト代(現金)をその辺にポイと置いておくようなズボラであったことが招いた事件だ。


ある日帰宅すると、同じ敷地に住む大家さんが玄関にメモを残していた。「今日立川警察署の刑事さんが訪ねて来ました」と。さっぱり心当たりがなかったが、署に電話をするようにということだった。電話すると署まで来てくれと。電話では話せないと言われたような。よく覚えていない、なんせ30年以上も前のことだ。


「あなたの部屋にね、2年前に泥棒が入ったんですよ。お金を盗んだと言っています。身に覚えがありますか?」とかなんとか聞かれたと思う。全く身に覚えがなかったし、え?2年前・・? 

心当たりがないとはいえ、警察に呼ばれてしまったのである。なんだかんだと怯えながらその日までを過ごし、震える心臓を落ち着かせながら電車に乗って立川までやって来たのに、拍子抜けするような話だった。


「そんなことはなかった、部屋が荒らされていたこともなかったし、失くなったものもないし、盗まれるようなものがない」という説明をしたと思う、動揺しながら。


しかし刑事さんは「いいえ」とキッパリ言ったあと、ある紙切れを見せてくれたのだった。


「あなたの部屋の間取りと家具の配置、こうじゃないですか?」


ひっ・・・息が止まるような恐怖だった。その紙切れに書かれていた間取り図、それはたしかに私の部屋だったのだ。机もタンスもエレピも・・


犯人は元配送員だった。立川と八王子で200件あまりもの侵入を繰り返し、そのすべてを記録していたのだという。そして被害者はすべて一人暮らしの女性であった。配送員時代に膨大なリストを作ったとしか思えない。


住人が不在だと金目のものを盗んだそうだ。私の場合はバイト代がおそらく3-4万円入ってた封筒から1-2万円を抜き取られたらしかった(なぜあんなにお金がなかったのに気づかなかったんだろう、それまた当時の自分が恐ろしいが)

就寝中の女性を狙ったそうだ。しかし暴力を振るうことはなく(ましてレイプなどしたことはなく)ただ侵入し、添い寝をする。女性が気づいて騒ぐと一目散に逃げてしまうパターンだったのだそうで。女性も真っ暗闇でそんな状態では犯人の顔などみる余裕もないだろう、なかなか捕まらなかったそうなのだ。


そして無施錠のアパートにしか侵入しなかったというのだが、200もの無施錠のアパートがあるものだろうか・・・夏場などは窓をあけていた人も多かったろうが、こうして振り返ると30年前の、のどかな八王子とはいえ不可思議な点はある、私の記憶が曖昧なせいかもしれない。しかし200件あまりというのは違いない、どれくらいの期間の累計なのかはわからないが少なくとも2年ということだ。その数に最もインパクトのある事件だった。


その男がなぜ捕まってしまったのか、その最後はなんとも哀れだった。


いつものように侵入したところ、女性は入浴中であった。気づいた女性はなんと!勇敢にも風呂から飛び出し、男を取り押さえたのである。武道の心得があったとしか思えない勇敢さである。あるいは警官だったかもしれない。


刑事さんは「盗まれたお金は多分戻らないけど、犯人の写真みますか」と言うので、見せてもらった。その容貌はきっと一生忘れることがないほどに鮮明に思い出せるのだが、ここに細かく説明するのは控えよう。30代くらいの、すこし「濃いめ」な風貌の男であった。いわゆるマグショットなのかわからないが、目が死んでた。とても印象深く死んでいた。


たしかに私は夜中に無施錠でコンビニに出かけたものだった。でも決して灯りを消さなかった。だから今でもいつその男が侵入したのか全く見当がつかない。

そして今になって思うのだが、当時の私は寝てしまうと死人のようだとよく言われた。友人たちが寝ている私の目や口を横に引っ張ったり、鼻をブタのようにしたりしてクスクス笑い(しかも外のベンチで寝ていた時だ)だんだんエスカレートしてゲラゲラ笑ってるビデオを撮られてしまったことがあったよなと。・・・。


そう、もしかすると添い寝されちゃったのかもしれない。今だから笑える話ではあるけれど。


写真は電車で寝ている私、友達のつとむくんと(いい笑顔だったのでついでに)、そして侵入された部屋。電話、笑。机をみると・・・エアブラシと酒瓶とフィキサチーフが混在してる。コンピュータはないが電話の手前にワープロがあった。 まったく、まったく遠くへ来たもんだ。


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